「Webブラウザに見るWebの入り口の歴史~明日の入り口はどこにある?(WebSig分科会2014 vol.1)」終了報告&レポート

モデレーターの馮です。こんにちは。

先週4月17日、「Webブラウザに見るWebの入り口の歴史~明日の入り口はどこにある?(WebSig分科会2014 vol.1)」が開催され、無事閉会しました。

ここではその模様をお届けします。

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WebSig24/7分科会とは

ここ数年、WebSig24/7では、通常のWebSig会議とWebSig1日学校を中心に各種イベントを開催してきました。2014年度はその取り組みのほか、テーマを絞り、少し小規模なスタイルでの分科会を開催して参ります。

今回は、その第1回目として「Webブラウザ」をテーマに開催いたしました。

ブラウザをテーマに取り上げた理由の1つは「Webの歴史がもたらしたもの」を考察することでした。

1990年にWWWが登場して今年で25年目を迎えます。この間、インターネット接続の公共化、家庭へのパソコンの普及、ブロードバンドやモバイル、ソーシャルネット、そしてここ最近におけるスマートフォンの浸透といったことがさまざまな変化をもたらしました。その中で、WebブラウザはWebへの入口・出口という役割を担ってきたわけですが、この間の歴史を振り返ることでWebブラウザの位置付けを考察してみようと、今回の分科会開催に至ったわけです。

Webブラウザに関するアンケート

始まりにあたって事前に行ったアンケート結果を紹介しました。実施期間が直前2日間と短い期間だったため、回答者数は27と少なかったものの、初めて触ったブラウザに関してなかなか興味深い結果と言えます。回答者が30代後半以降が半数以上を占めていたことも、この結果につながったのではないでしょうか。

(アンケート回答者の年齢属性)
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(回答者が初めて触ったWebブラウザ)
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また、最近最も使っているブラウザとして、PCではChromeがダントツで、スマートフォンでもSafariが頭一つ抜きん出た結果となりました。

(現在一番使っているブラウザ(PC))
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(現在一番使っているブラウザ(モバイル・スマホ))
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Internet Explorerを軸としたブラウザの歴史

会の説明とアンケート結果紹介によるアイスブレイク後、本会がスタート。メインスピーカーには、日本マイクロソフト株式会社UXエバンジェリストの春日井良隆氏を迎え、ご自身のキャリアと経験から、Webブラウザに何が起きてきたのかを語っていただきました。

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春日井氏は元々アドビ システムズに所属され、その後、2007年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職されました。「実際の業務としてWebブラウザに関わったのはInternet Explorer 8から」と前置きはしながらも、それまでのさまざまなプロダクトで培った経験から、大変興味深いお話が聞けました。

ブラウザと技術
http://evolutionofweb.appspot.com/?force=true

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全体的には、ブラウザ誕生以降のトピックを1つ1つ取り上げて解説が進みましたが、中でも、Internet Explorerを軸にした解説が印象的でした。

NCSA Mosaic

まず、WWW開発後、最初のシェアを獲得したと言われているNCSA Mosaicの話題からスタート。当時の日本では、特定の企業や学術機関など、インターネットそのものの利用が限定されている中、参加者(とくにアラフォー以降)のほとんどがこのNCSA Mosaicを触っていました。

春日井氏はNCSA Mosaicの紹介の際、「Internet Explorer 1/2はこのNCSA Mosaicのライセンスを保有していたSpyGlassからライセンスを受けて開発されました。最初のIEはMosaicとは兄弟のような関係と言えます」と補足説明を加えました。

その後、Netscapeが開発したNetscape Navigatorが最初のシェア獲得を実現します。まだ、インターネット/Webが一般家庭と距離があった時代(1994年)、最初のベータ版が開発され、リリースに至りました。とくに簡単に導入できるという点が評価され、(当時の限られたユーザの中で)最大のシェア獲得に至ったわけです。

Internet Explorer 3/4とFlash

そして、1995年、Windows 95が登場します。このころから、日本でも家庭でインターネットやWebに触れるという状況が増え始めました。技術面では、このWindows 95からインターネットプロトコルとしてTCP/IPを利用できるようになったことは、その後のインターネット普及の1つのきっかけになったと言えるでしょう。

ここでまた春日井氏より「実は初期のWindows 95では、OSの機能拡張バックであるWindows plus! for Windows 95に含める形で提供されており、当時は、パソコン=Webブラウズという構図が一般的ではなかったことがうかがえますね」という興味深いコメントが付け加えられました。

その後、日本ではテレホーダイを始め、インターネット/Web接続のためのインフラ整備が進み始め、ユーザのパソコン使用目的として、Webブラウズが浸透し始めます。この流れを受けて、Webで扱う表現力向上が高まっていったのもこの時期です。中でも、Adobe Flashが与えた影響はとても大きいものだったと言えるでしょう。それまで、JavaアプレットやアニメーションGIFによる動画、JavaScriptを使ったインタラクションというのはあったものの、扱いづらかったり、当時のパソコンのスペックには高負荷だったわけです。

そこに、1996年に登場したFlashが参入したことで、一気にWeb上での表現力に注目が集まり、より高い品質のクリエイティブが生まれていきます。

ちなみにこのFlashの名称は、当時技術を持っていたFutureWaveのソフト「FutureSplash」をMacromediaが会社ごと買収し、その技術名のFとlashを組み合わせて生まれた名称(春日井氏補足)とのこと。

Internet Explorer 6の隆盛

それ以降、2004、5年ごろまではWindows XPの登場と重なったこともあって、一気にInternet Explorerのシェアが拡大します。バージョンで言うと、5→5.5→6の時代です。中でもInternet Explorer 6は、90%以上のシェアを取ったとも言われています。

この頃について春日井氏は「ある意味あぐらをかいてしまった(苦笑)」と表現したように、当時を知っている参加者からもWebブラウザと言えばInternet Explorer 6という印象がすり込まれているほどのものでした。

技術的には大きなトピックが登場しなかった一方で、日本では、2003年にブログブームが、2004年にソーシャルネットワークの概念が生まれ、それまで情報を受け取るツールとしてのWebブラウザが、徐々に、ユーザ自身の意識の中で、情報を上げるためのツールとしてのWebブラウザという考え方が芽生え始めたころでもありました。

いわゆるCGM(Consumer Generated Media)やUGC(User Generated Content)と呼ばれた考え方が生まれた時代です。それでも(僕自身の主観ですが)、まだまだ一般ユーザが普通にWebに情報を公開するというまでには至っていなかったように思います。

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Safari、Firefox、Ajax

そして、2005年のWeb 2.0の考え方が登場するとともに、Ajaxに注目が集まります。Ajax自体は1999年に生まれた技術概念ですが、2004年にGmailが、2005年にGoogleマップが登場したことによって、"ユーザにとって便利な"Ajaxという考え方が浸透しました。

これと同時期に生まれたのがMozilla Firefoxです。Firefoxは1998年にオープンソースとして公開されたNetscape Communicator 5.0のソースコードを元に開発が進んだもので、2002年にPhoenixという名称でリリースされ、2004年2月にFirefoxという名称での初めてのリリースが行われました。

オープンソースで提供されたこと、また、プラグインが開発しやすいことなどから、とくに技術者層に受けてシェアを拡大していきます。また、再び息を盛り返してきたAppleが提供するSafariが登場したのは2003年で、それ以降のMacOS(とくにMacBookなどのモバイルデバイス)の普及で、シェア獲得競争に名乗りを上げ始めた時期でした。

ChromeとHTML5、ブラウザ戦争

ソーシャルネットワークが浸透した結果、一般ユーザも入力ツールとしてのWebブラウザが浸透し、数年前まではInternet Explorer一択だった状況が徐々に変化します。そこで主役となったのが、Googleが開発したChromeです。

Google Chromeは2008年9月にベータ版が、同年12月に正式版がリリースされた、昨今のWebブラウザの中では新興のものと言えます。しかし、その後、一気にシェア獲得に向けて動き出します。まず、開発版としてChrominumの存在があったこと、各種OS版を提供していったこと、Extentionと呼ばれる追加機能の仕組みを用意したことなどが、功を奏したと言えるでしょう。また、TVCMなど、ユーザに向けた訴求を積極的に行ったことも、後発ながらシェア獲得が進んだ一因ではないかと思います。

ちなみに、2014年3月にThe Next Webが発表したブラウザシェアの結果では、

58.19% Internet Explorer
17.68% Firefox
16.84% Chrome
5.67% Safari
1.23% Opera
0.39% その他

となっています。

スマートフォン登場でどうなる?

そして、最近の話に移ろうというところでタイムアップとなりました(笑)今回、MCをつとめた自分、スピーカーの春日井氏、そして、参加者の中のシニアの皆さんでの会話が予想以上に盛り上がってしまい、昔話に花が咲いてしまいました(笑)

会場から―アクセシビリティの話

最後に、会場からいくつか質問を受けた中で、アクセシビリティの話題が取り上げられました。Webの入口・出口であるWebブラウザとは違った観点で、きちんとしたマークアップ、誰もがアクセスできる情報提供というのは、Webに関わる立場として強く意識していかなければいけないことです。また、それを実践することの大切さと難しさへの理解も必要と感じています。今回はほとんど触れられませんでしたが、こういった話題に関した分科会も有益な場になるのではと、僕自身考えています。

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まとめ

参加者の一人(20代後半)の方からは、「正直、ついて行けない内容が多くありました(苦笑)」というコメントをいただいた点については、運営側として考慮しなければと思いながらも、せっかくの分科会スタイルですので、「わからない」「難しい」と思ったところについては、ぜひ皆さんでさらに調べ、それでもわからないことはスピーカーやモデレーター、あるいは参加者同士で議論しながら考察を深めていただけたら、WebSig24/7としてもうれしい限りです。

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また、今回はほとんど触れられなかった未来の話については、別の機会を用意して年代関係なくディスカッションして、皆さんと一緒にWebの話題で盛り上がっていきたいと考えています。

今後もこのスタイルの分科会開催は予定しておりますので、ご興味のある話題や聞きたい話題がありましたら、 info@websig247.jp または、モデレータ陣に直接ご連絡いただければと思います。

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