「日本のソーシャルネットワーク10年(WebSig分科会2014 vol.2)」終了報告&レポート

モデレータの馮です。こんにちは。

昨日の代表和田さんのエントリでも報告したように,WebSig24/7はこの7月で設立10年を迎えました。

あっという間の10年,その間,インターネット/Webの世界では様々な変化・進化が生まれています。そして,同じく10年前,日本のインターネット/Web界隈に登場したのがソーシャルネットワークです。去る7月7日,七夕の夜に開催した今年2回目となるWebSig分科会2014では,「日本のソーシャルネットワーク10年」を取り上げました。

会場となったのは,今年オープンしたばかりの「GAT」。銀座(Ginza)アート(Art)&テクノロジー(Technology)の頭文字を取って付けられた名前には,幅広いジャンルのテーマを取り上げ,ここでたくさんの人が集まり,新しい何かを生み出す場になるようにという想いが込められているとのこと(開催協力:ロクナナワークショップ)。

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当日は新しく生まれたリアルな場で,ソーシャルネットワークの歴史を学び,そしてソーシャルネットワークと同じくたくさんの人がつながりました。ここではその模様についてお届けします。

多彩なパネリストとともに振り返る日本のソーシャルネットワーク10年

この日は,株式会社nanapi代表取締役 古川健介さん(けんすう),株式会社ミクシィmixi事業本部マーケティング部 岨中健太さんの両名に加えて,WebSig24/7代表 和田さん,モデレーター 藤川さん(えふしん)の4名をパネリストに,僕がMCとして,イベントを進めていきました。

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前半は10年を1年毎に振り返り,後半は,事前に募集したアンケート結果や数字を元にディスカッションを進めていきました。

SNSの概念の登場,mixi,Twitter,Facebook,ソーシャルグラフ,リアルグラフ......10年の間に何が起きたのか

2004年:日本のSNS元年,mixi登場

まず,2004年当時の振り返りからスタート。日本では2月にmixiやGREEがオープンしたのですが,そのタイミングと前後してOrkutというSNSが一部のユーザ間で流行りました。これは,Google社員が20%ルールで開発したSNSで,「インターネット上で人がつながる」「共通の趣味を共有する」といった最低限の機能のみ実装されていたのですが,「つながる」という感覚にユーザが反応したのではないかと思っています。ちなみに,Orkutでは承認してつながった友人をレイティング(点数付け)する機能があるなど,今ではちょっと想像できない機能もありました。そして,mixi・GREE,とくにmixiの登場により,日本のソーシャルネットワークの世界が始まったという説明から,プレゼンが始まりました。

また,先にもお伝えしたとおり,WebSig24/7が設立したのも同年。当時は「24時間365日戦うWeb制作者の会」というコンセプトでmixiにコミュニティをつくり,その中で参加者同士の交流が行われていました。この点について和田さんは「ちょうど受託制作に関して悩みを抱える人が多かったこともあって,このコミュニティを起点にいろいろな議論や相談ができました。もともとメールベースでスタートしたWebSig24/7の活動が,mixiコミュニティの存在でさらに活性化しました」と,リアルにつながるコミュニティの価値について述べました。

そして,2005年のWeb 2.0ブームにより,サービス開発が一般化し,また,SNSそのものを使うことがあたりまえになっていくようになります。また,前述のコミュニティに関しては,それまで交流をするための手段としてのネットと言うとメールが主流だったのが,一気にSNSに移り始めた年でもありました。パネリストのけんすうさんは当時「劇団ブサイコロジカル。」という,アマチュアの劇団を運営されていて,公演の告知はもちろん,劇団員の募集など,すべてをGREEのコミュニティを使って運営されていました。このように多くのユーザがSNSが持つ可能性を最大限活かそうと試みていた時代でもあります。

そして,2006年にmixiを運営するイー・マーキュリーがミクシィに社名を変更し,mixi全盛の時代を迎えました。今ではそこらじゅうで見かけるSNSとニュースの融合であるソーシャルメディアですが,そのきっかけとも言えるmixiニュースがスタートしたのがこの年でした。パネリストの岨中さんがmixiニュース立ち上げメンバーでもあり,そのときのことを「(まだまだソーシャルメディアという概念がなく)既存のメディアやユーザからの意見が出ました。SNSとニュース(既存メディア)をつなげた結果,どうなるか誰も想像できなかったので。あとは,リリースに合わせてUIを2カラムから3カラムに変更したときは多くのユーザから反発されましたね(苦笑)」と,思い出とともに先行者だからこその悩みを振り返りました。

第1次Twitterブーム,第1次動画ブームとなった2007年

翌2007年は,日本における第1次Twitterブームでした。振り返ってみると2004年のOrkutと同じく,一部のユーザ,いわゆるアーリーアダプターがTwitterに注目し,3月末~4月にかけて一気に使い始めました。このタイミングで,えふしんさんは携帯電話(ガラケー)向けTwitterクライアント「モバツイ」を開発し,一気にユーザを獲得していきます。この点について,「当時のTwitterは日本語で使うには色々バグがあったり,そもそもみんな使い方がよくわからなかったこともあって(笑),自分たちが使いやすいTwitterクライアントをつくろう!という動きが多くありましたね」と,Twitterクライアント開発バブルの状況を説明しました。たしかに,モバツイ以外にもTwitをはじめ,日本産のTwitterクライアントが多数生まれた年でもあります。

もう1点,2007年の大きな出来事としては,日本国内でのSNSを利用した第1次動画ブームを取り上げました。この年はUstream.tvやニコニコ動画がサービスインしたほか,mixi動画がリリースされています。また,ハードウェアとして,コンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が普及していたこともあって,誰もが手軽に動画を撮影し,さらにそれをネットにあげて見てもらおうという意識が高まったわけです。ちなみに,世界最大の動画共有サービスYouTubeはこの年よりも2年早い,2005年にサービスインしていました。

このような形で,1年1年を振り返っていったのですが,お読みいただいてもわかるとおり,1年1年が盛り沢山だったため,実際のプレゼンでもだいぶはしょりながら進めました。ですから,このレポートでも少しはしょって進めます(笑)

2008年は日本国内でのiPhone発売のほか,IPA主催のイベントでの「10年は泥のように働け発言」がネット上で取り沙汰され,今でいうところの炎上の走りになった出来事がありました。そして,2009年,第2次Twitterブーム,いわゆる,Twitterが日本国内の多くのユーザ間で市民権を得た年でもあります。勝間和代さん,広瀬香美さんのやりとりや「ヒウィッヒヒー」などは社会現象にもなりました。また,この結果,それまで「SNS=mixi」という概念が定説になっていたのが,改めてSNSとは?を再考し始めた年になったように覚えています。2010年に入ってもTwitterの勢いは止まらず,とくに企業のネット戦略の一環としてTwitterマーケティングが積極的に行われたり,また,その派生としてフラッシュマーケティングのような戦略が流行りました。

3.11以降~SNS再考の時代

そして,2011年。この年はソーシャルネットワークの観点抜きに,日本全体として衝撃を受けた年でもあります。3月11日に起きてしまった東日本大震災です。誰もが本当に衝撃を受け,また,被災し,悲しく衝撃的な体験をしたのです。ただ,この時,SNSの存在・価値が改めて見直されました。たとえば,連絡手段としてのSNSだったり,情報伝達手段としてのSNSだったり。「たとえばログインしているかどうかということが生存確認になったり,また,地域コミュニティを使って情報を伝えていただいたり,(ソーシャルグラフ・リアルグラフ)を持っているmixiを改めて活用しようと思ってくださる方たちが多かったのを覚えています」(岨中さん)といったようなコメントがありました。
また,この年に映画『ソーシャル・ネットワーク』が日本で公開されたことにより,日本のソーシャルネットワーク界隈でFacebookが台頭し始めます。それと同時に,実名・匿名論争といったような話題も盛り上がっていました。

2012年はFacebookの躍進に加えて,2011年にリリースされたLINEが徐々にユーザを増やしていきます。また,Twitterなど利用した既存マスメディアが増え始めて,いわゆるSNSとマスメディアのメディアミックスの形が見えた年でもありました。

そして,2013年はLINEが台頭,また,vineやツイキャスといった若い連例のユーザ達による動画SNS利用,第2次動画ブーム到来があり,そして今年に至ります。

こうした形で,10年の歴史を振り返りました。

1人あたり10種類以上のSNS・コミュニケーションツール利用経験,今はFacebook,Twitterが使われる

そして,いよいよ4名によるパネルディスカッションです。パネルディスカッションにあたっては,WebSig24/7で事前に実施たアンケートの結果を用いて,テーマをピックアップしました。

  • 現在使用しているPC
  • 現在使用している携帯電話・スマートフォン
  • 使用したことのあるSNS・コミュニケーションツール
  • 現在最も使っているSNS・コミュニケーションツール
  • SNSといって思い浮かべること

ちなみに,使用したことのあるSNS・コミュニケーションツールの結果は以下のとおりで,1名あたり10種類以上のSNS・ツールを使っているという結果が出ました。

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匿名と実名,コミュニティの存在意義

匿名・実名よりもアイデンティティ

さて,最初のテーマは「匿名と実名」です。この点について,4名とも「それほど匿名と実名についての意識がない」という意見が出た一方で,「匿名・実名という切り分け方よりも,アイデンティティを出すか出さないかという区別のほうが大きい」(けんすうさん)という声が上がりました。「たとえば,自分の興味のあるコミュニティに参加していたとして,そこにいる自分というのはコミュニティ内では認識されていたとしても,リアルな自分,たとえばFacebookやTwitterアカウントには絶対紐付けないし,紐付ける必要もないと考えています」(和田さん)とのことでした。つまり,コミュニティ内にはソーシャルグラフをそこには持ち込まず,いわゆるインタレストグラフ(興味のつながり)によるコミュニケーションを強くする傾向があるということでしょうか。

また,SNSと関連して目にする機会が増えてきた「承認欲求」という言葉。これは「人は誰しもいいね!は欲しい」から生まれるもので,それ自体は自然なことという仮説を立てました。その上で炎上に至ってしまうのは「"本当に言いたいこと"と"いいね!をもらうための表現"が混在し,そこから生まれる齟齬だったり粗というものが,炎上の一因。そして(ログとして残ったりシェアしやすいがために)今は注目されやすくなってしまっているのが,SNSが抱える問題点の1つ」(えふしんさん)という意見が出ました。このリスクについては「実は不特定多数の顔がわからないユーザより,(何かあったときに直接自分に降りかかる危険性があるため)身近にいるユーザに対するリスクのほうが大きく,だからこそみんな実名に怯えてしまう」(えふしんさん)というように,人が実名ではなく匿名を使いたがる気持ちについて考察しました。

ちなみに,特定コミュニティにおける匿名性については,その人の背景・社会的地位などよりも,発言が重要視されるため,逆に匿名性のほうが楽しくなる場合があり,その1つの成功例が2ちゃんねるではないか(和田さん)という意見もありました。

つながりの数<ゆるやかなつながり

フレンド数,いわゆるつながりの数に関して,けんすうさんは「人間っていうのは150人のつながりが限界だと思っています。それ以上になると自分自身が処理できない。仮に150人以上のフレンドやフォロワーがいたとしても,アクティブに動く数のMAXが150だと思っていて。新しいフレンドが増えることによって,誰かとのコミュニケーションの熱量は減るんじゃないんですかね。結果,ゆるやかなつながりが求められていくように思います」と述べました。SNSが登場したことによって人と人がつながりやすく,可視化された一方で,結局使うユーザが対応できる人の数が増えるわけではないという,(プラットフォームの進化と人間の能力にある)ジレンマの先にくるものが何なのかを指摘したコメントと言えるでしょう。

また,日本発,そして最大のSNSとしてソーシャルネットワーク界隈を牽引してきたmixiの運営の立場から岨中さん自身は,「今はSNSが何かということも浸透していますし,(SNSを)使ったことがあるユーザもたくさんいます。ただ,初期のころのmixiは,誰も使ったことがないわけで,新機能1つ取ってもどういう反応が起きるかわからない怖さ,あるいはドキドキ感がありました。そう考えると,今のソーシャルネットワークユーザというのは,たとえば比較対象としてのmixiやTwitter,Facebookがあるわけで,その点で,それぞれのグラフの価値観というのもかわってきているのかもしれませんね」と,つねに最前線を走ったサービスの中の人の声を聞くことができました。

次の10年に向けて~ゆるやかなつながり・リアルとのつながり

最後に,次の10年に向けて,ヒトコトずつもらい,イベントを締めくくりました。

「先ほどもお伝えしました,ゆるやかなつながりを求めるサービスが増えていくように思います。今,私たちが取り組んでいる"アンサー"というQAサービスはまさにそれを具現化したいと思っているところで,これからどういう風に広がっていくのか楽しみにしています」(けんすうさん)

「正直どうなるかはわからないです(笑)ただ,いわゆるリアルとネットを繋げるO2Oはもっと普及し,活用されていくように思います。また,私たちmixiが持っている価値が何かを再度見て,次につなげていきたいですね」(岨中さん)

「私もけんすうさんのアンサーのようなサービスは面白いと感じていて,これから残っていくと思っています。無理やりソーシャルグラフをつなげずに,たとえばインタレストグラフだけの関係のコミュニティが求められるのではないでしょうか」(和田さん)

「今はレイトマジョリティが主流の時代になってきています。そして,現実につながれるネットワークの中での情報共有が欲しいわけなので,それを実現するサービスが求められると考えています。あとは,ツイキャスのように短時間動画,それを閉じた空間で楽しむようなもの,瞬間的なサービスですかね」(えふしんさん)

リアルな場でのネットワーキング~懇親会

プレゼン・ディスカッションタイムがあっという間に過ぎ,最後は,登壇者,参加者一同による懇親会,ネットワーキングが行われました。この日は七夕ということもあって,GATスタッフも浴衣姿で場を盛り上げてくれました。僕自身は,こういう,リアルな場でのつながりや盛り上がりというのが,実は今のSNSでも求められているのではと思っています。

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さて,10周年を迎えたWebSig24/7ですが,これからもWebやインターネットに関わる様々なテーマに注目し,取り上げていきます。9月には10周年を記念したパーティー・イベントも予定していますのでお楽しみに!

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