第1回 Webライティング・エディトリアル勉強会 まとめ

みなさんこんにちは、モデレーターの渡邊です。
先日のUst放送で岡本さん、村山さんに頂いた回答ですが、テキストでも頂いておりますのでどうぞご覧下さい。
一部、放送中に割愛した質問回答も入っています。
個人的には「あらかじめ」話をしておくとか、方向性を共通認識としておくとか、線引きをしておくことが大事なのだなと思いました!

1.原稿にそのものに関して

(1-1)なにがよくて何が悪いのか判断の善し悪しがつかない どこに基準を定めたらよいのか

(質問)
社内のマーケティング担当者に「文章書いてデザインしてコーディングをしておいて」とか、外部作成のインタビュー記事を「チェックしておいて」などと言われます。書いた文章は赤字にだらけになって直されます。インタビュー記事は文章があまり良くないのはわかるのですが、ライターさんに具体的にどこを指摘していいか見当がつきません。

(回答:岡本)
この問いには二つの前提があります。まず、文章の善し悪しです。
これは紙・Web共通の観点として、ヒューマンリーダブルであるかということ、そしてWeb特有の観点としてマシンリーダブルであるかということがあります。
前者は単純であなた自身が読んで、内容が腑に落ちるか、すっと頭の中に入ってくるかです。その善し悪しは、文章の主述の関係が明確か?主述の間が間延びしていないか?そもそも主語が省かれていないか?接続詞が入りすぎていないか?論理が破綻していないか?言い回しが冗長だったり文末表現が繰り返されていないか?句 読点の打ち方がリズムを悪くしていないか?。。。。などなどといった点があります。
後者のマシンリーダブルについては、いろいろありますが「適切な見出しがつけられているか」、が非常に重要です。紙との最大の違いはそこです。マシンに見出し要素を伝えることは文書の論理構造を伝える意味でも重要ですが、同時にフォントサイズが可変した際に読み進めるにあたって道しるべを与えます。また、読み手に対して、キャッチーかつ以降の段落の要点を的確に表した見出しは、読み手のテンションを維持し、離脱を防ぐ効果があると言っていいでしょう。
ただ、そうした文章の善し悪しについては、プロのライターに依頼している時点で担保されているといっていいでしょう。マーケティング担当者が打ち出したいのは、文章の正しさよりも、フックの強さや魅力・説得性の演出のはずです。ということで、ライターに対しては、最終的にマーケティング担当者が打ち出したい方向 にインタビュー記事が向かっているかを、インタビュー企画段階から明示していく必要があるでしょうね。

(質問)
キーワード広告のようなものであれば、クリック数やコンバージョン数でそれなりに効果測定できるのですが、 ウェブの各ページコンテンツにおいて、ライティングやコピーの良し悪しというのはどういう基準で決めているものでしょうか?

(回答:岡本)
上記と重なりますが、本文のライティングと、見出しやタイトルなどキャッチコピーは少々見るべき観点が違うでしょう。
本文ライティングは、正に上記のとおりで、読み手にとっての文章の善し悪しと、提供側にとってのコンバージョンを含む効果につながるか否かかでしょう。伝えたいことを漏れなく正確にいかに伝えることができたかという点で評価できます。どちらも、離脱率やコンバージョン率が「参考」にはなります。しかし、それは参考となる指標のひとつに過ぎません。
それに対してキャッチコピーは、必ずしもそうでない側面もあります。見出しのレベルにもよりますが、論理構造や文章そのものよりも、いかに強く、引っ掛かりをもって読み手に刺していくのかが重要になることもあります。そういう意味では、人の感性に直接訴えかけることが必要となります。

(質問)
印刷物とWebのライティングはどこを注意すべきか

(回答:岡本)
人は、紙に印刷された文章を読むのと、モニターに表示された文章を読むのとでは、維持できる集中力が異なります。また、モニターには物理的に表現できる面積にも限界があります。以上の2点は、モニターで読み進めるWebの文章には、全体像を俯瞰で把握しにくいということを表しています。
読み手はモニターに表される文章も視覚情報として見ています。字下げや行間をあけずに句読点の位置で頻繁に改行することは、まとまりとしての文章を把握することを阻害し、読み手の集中力を落としてしまいます。
極端に言えば、ヘッドコピーとその直下のリード以外の本文は、見出しと段落としての本文の塊がいくつあるかをわかりやすくするために、同一段落の中では改行せずに流し込む方が望ましいと言えるでしょう。

(質問)
SEO観点で注意したいことは?

(回答:岡本)
用字・用語をどう使って書き進めていくか、また表記の揺れをどの用字・用語に合わせていくか、にあたっては、キーワードツールなどを使ってユーザーがどのような語句を検索に用いているかを調べて合わせていくのがいいでしょう。また、ページタイトル、見出しにユーザーが検索に用いている用字・用語を盛り込むなどは有効と考えられます。
ただし、そうしたことも読み手にとって不自然ではない範囲で実施すべきです。テクニックを駆使して検索エンジンの上位に表示されたとしても、それが何らかの成果につながらなければ意味がありません。まずは、文章がマシンにも理解される論理的な構造を持っているか、人を惹きつける魅力や強さを備えているかを考えることが第一です。

(質問)
ふさわしい表現方法(NHK辞書基準にする、等)は?

(回答:岡本)
ふさわしさは、個々の現場で意識されるべきものです。極端にがんじがらめに考える必要はありません。ですが、あくまで用字・用語、国語としての標準はどこにあるかを認識しておくのでああれば、「記者ハンドブック」「JISZ8301 規格票の様式及び作成方法」「国語施策情報システム」などに目を通しておくといいでしょう。それらから、個々の現場での用字・用語などの統一表記をガイドラインとしてまとめておくと便利です。

(質問)
読み手別のいいわまわし(硬い文章を噛み砕く、等)は?

(回答:岡本)
これも。「これ」といった基準は存在しません。ただし、ユーザーがモニターで文章を読むことの緊張感を考えると、自分が普通に辞書で調べずに書ける漢字以外は、かなに開いていく(かな表記にする)が望ましいでしょう。その「かな表記に開く度合い」は、上記「記者ハンドブック」などが参考になります。
また、注意したいのは、簡潔につたえることを意識するあまり、漢語由来の名詞に 「する」やその活用形をつけて動詞として多用することです。
確認する、開始する、吸収する、成長するなどは、確かめる、始める、吸う、育つと置き換えるくせをつけると、堅さは和らぐでしょう。

(質問)
ボリュームはどれぐらいが適当なのか

(回答:岡本)
1つの見出しに続く本文の意味としてのまとまりは400文字程度が望ましいと矢野り んさんは言っています。1段組としてレイアウトするのであれば40〜50文字で10行。 他方で、人が一度に集中力をもって読み通せるのは100文字程度ということも一般 的に言われています。
その観点からも、1行アキを入れて2〜3つの塊に分割するのが適切でしょう。 松下健次郎さんも「2〜4行程度の塊に分割すべし」と言っています。塊の間には図版、表組み、リストなどの要素を入れても、目先にビジュアルとしての変化が出るのでいいですね。
コンテンツが文字要素がほとんで「読ませるもの」であること、なおかつ本文エリアの横幅にゆとりがある場合は、30文字程度で2段組にするのが望ましいとも矢野りんさんは言っています。読み手が文章を読むことに集中できるからです。なお、紙では15〜20文字程度で段組をさらに分割することは一般的です。
本文エリアがブラウザの横幅の65〜70%程度が適切であるという矢野りんさんの考え方からすると、1024768ピクセルの標準解像度では、横幅900ピクセルの70%程度で本文領域幅が600ピクセル程度、ファーストビューにおけるフォルド(高さ)が600ピクセルと考えられます。ファーストビューにおいて、1段組の本文の1段落目と部分的に2段落目が見える、3段落目が隠れている程度が適切なスクロール幅と考えれば、1ページあたりのボリュームとして適切なのは2段落か多くて3段落程度。1500〜2000字程度が適当と考えていいでしょう。
こうした文字量や写真や画像のバランスに、最適解はありません。あくまで上記を一つの目安として、全体デザインとのバランスも見据えて、サイトごとのバランス感を見いだしていきましょう。

(1-2)文責はどこにあるのか

(質問)
サイトのライティングといいますと、エンドユーザーにさらされる言葉であり、ひとつ間違えば訴訟の対象に なるようなものかと思われますが、責任の所在を明確にするため、皆様は、クライアント殿と契約を締結する際、 ライティングに関してどのような内容で合意されていますか、

(回答:岡本)
個々のライティング実務に関しては、納品された原稿を依頼者が買い取る形となるので、ライターの記名で掲載することがほとんど無いですよね。そんなことからも、文責は基本的に依頼者にあると考えてよいでしょう。問いの場合は、クライアントにある(移る)ということになります。また、個々のライティング実務において、そのようなリスクの所在を契約に明記するのはあまり現実的なことではありません。
もし万全を期すのであれば、クライアントとの業務契約書の中で保証や瑕疵、損害賠償について条文として明記し、個々の個別案件の契約とは切り離すのが合理的かつ一般的です。

(1-3)翻訳に関して

(質問)
翻訳したものと、日本語オリジナルのものを変更するときによくある失敗例。
日本語に比べ、英語は文字が長くなる傾向にあるため、過去に画像上の文字が粒みたいになって読めないケース あった。
発注の問題なのか、英訳した後に、Web用にふさわしくするには・・・とかもあれば知りたい。

(回答:岡本)
すぐにコレというのを思いつかないですが、いわゆる「カタカナ用語」の間違いは気をつけた方がいいでしょう。
アボガド(正:アボカド)、エンターテイメント(正:エンタテインメント)、コミニュケーション(正:コミュ二ケーション)、フューチャー(正:フィーチャーケー)など。
こうしたものを含めて、用字・用語に関するリソース、特に英語ホームページ用和英辞典、なども駆使して用語基準をつくるといいですね。

2.クライアントとの折衝(素材の取得含む)

(2-1)訴求ポイントが折り合わない

(質問)
常にどちらが良いかのデータ等があるわけでもなく、時間の制約もあるので納得いかないまま折れる事も多い。 良い対応方法や、どうされているかなどがあれば教えてください。

(回答:村山)
(難しい問題ですね) 弊社の場合も、1回か2回は意見を言いますが、3回言ってダメだったら、クライアントもしくはディレクターの指示に従うというルールでやっています。そのときは「じゃ、今回はこれで反響みてみましょう」ということで結果次第では、再度見直すという余韻も残しつつです。 そこは自分達のサイトではないので、なるべく割り切ります。
Webの場合、繰り返しがきくメディアです。
反応をみて修正する、いわゆるPDCAサイクルがしやすいメディアなんですね。
実際にはその場合、運用費だったり更新費だったり費用が発生しますので、なかなか実現しない場合も多いと思いますが、もし直請けの案件だったら、2〜3ヵ月後に「反響はどうですか」とお客様に連絡してみてもしそれで渋いようだったら、「じゃ、見直しましょう」と営業する、というのはどうでしょうかw
訴求ポイントが完全にずれていると、結果が伴わないのでこれは問題外ですが、ただ訴求ポイントに対して、複数のアプローチ方法がある場合は何が結果を生むのか、実際に市場になげてみないと分からないところもあります。

(2-2)どこまでこちら側で手を入れていいものなのか悩む

(質問)
文章に誤字脱字が多い、日本語が変、キャッチコピーが弱いなどがあって、ライターではなくディレクターとして関わっている場合にどこまでお客さんに直してもらってどこまでこちらで直すのか、工数的に厳しいところがある。
そんなとき、Webディレクターの立場として、お客さまにどうやって指摘したら、よりよいコンテンツを作っていけるものでしょうか?

(回答:村山)
2点あると思います。
1.どこまで修正するか、それが自分自身の許容範囲なのかどうか(自分、会社としてのポリシー)
2.どこまで原稿に手を入れていいのか、(責任分岐)
文章というのは、書いている本人にはどこがおかしいのか、意外に判断がつかないものです。なぜなら自分の頭の中にはその原稿の世界観みたいなものができあがっており、自分の中では完結しているからです。
誤字、脱字や送りがなの違い、言い間違いなどについては、人間が書くものですので、何らかの間違いがあっても不思議ではありません。
これは弊社のやり方ですが、原稿の修正をあらかじめお客様から要望が合った場合は、リライト費というのを見積に入れています。
予算的にリライト費がでない場合は、これは私たちのポリシーとして、原稿を素読みした段階で、同じ表現が繰り返しつかわれていたり、明らかな誤字・脱字がある場合は修正したりします。このような場合はWordの文章構成機能を使って、とにかくあまり時間をかけないように工夫しています。
ただ、どんな場合であっても原稿を受け取ったディレクターはお客様の原稿を一番最初に読む「読者」でもあるわけですから、お客様はその感想を聞きたいはずですし、共感を得たいとおもっていると思います。原稿を読んだら、とにかく感想をすぐに言ってあげてください。全体的に「?」というものでも、ある部分をほめるだけでもいいですし、「御社のことがさらによくわかりました」的な感想をいってあげると、その後に修正のお願いをしたとしても、不味い関係にはならず、むしろいろんな事柄を引き出すことができますよ。
ただし、書き手によっては一字一句直してはならぬ、というタイプの人もいるので、要注意を。
また表記ルールをあらかじめお客様と共有しておくのもいいと思います。 キゴウラボでは「朝日新聞用語の手引き」を基本にしています。 できればお客様とも同じものをもっていただきたいとおもっていますが、なかなかそこまでは出来ない場合もあるので、基本的な表記ルールを納品時につける場合もあります。

(2-3)原稿が出て来ない

(質問)
どんな原稿が必要なのかお客さんに理解してもらえない。

(回答:村山)
これも最初の交渉としてどこまでを業務範囲としてやるのかということかと思います。 弊社では最初に「字コンテ」といっている要素だけを書き出した原稿をつくりそれをワイヤーフレームもしくはデザインに反映してもらいます。見出しはこのページだったらこんな見出しになるなぁと予想したものをいれ、本文はだいたい1段落に入る文字数を400字程度と想定し「我が輩は猫である」とかまったく関係のない文章をいれます。よく文章や見出しを「ダミーダミー」とか「○○○○」としているラフをみることがあるのですが、それはお客様が見てもイメージがわかないと思うので、できるだけ生に近いほうがいいです。そうするとお客様の理解もはやかったりします。

(質問)
クライアントからあがってくる情報が少なすぎてどう構成していいのかわからないままライティングをする場合があります。その少ない情報の中でどのようにライティングされていますか。ポイントなどあれば教えていただきたいです。

(回答:村山)
サイト全体なのか、1ページあたりのことなのかにもよりけりですが、情報が少なかったとしても、該当のページにあった情報であれば、少ないなりにスタートするということでもいいと思います。もし時間と予算的余裕があればその情報をもとにヒアリングをかけられればベストですが。
ただ、文章だけで見せるわけではないので、図表をいれたり写真をいれたり、たとえば見出しをちょっと長い見出しにすることで、ボリュームを持たせるなどの方法があるかと思います。 参考はブルータスとか(オールドスタイルですが)。
Webのライティングについていえば、ある知り合いの編集者が先日twitterでこんなことをつぶやいてました。 「雑誌、書籍、Web、twitterとどれも求められる文章の質が違う。結局こういうものをちゃんと書き分けられる人が残るような気がする。」(ライターの場合のことだと思います)
Webの場合、1ページあたりの最適な文章量というのは岡本さんの回答の中でもいわれていましたが、2000字だとすると、私が前につとめていた雑誌の特集の1記事が4000字だったので、その半分の字数しかないわけです。ですからその2000字に伝えたいエッセンスをギュッと詰め込む必要が出てくると思います。Webでのライティングの場合、そんなことを意識する必要があるかと思います。

3.その他

(3-1)配置(レイアウト)上の注意

(質問)
人の目は左上から右下へ・・・に基づいて、記載や配置する上での推奨があれば知りたい。

(回答:岡本)
Webでは、ディスプレーの大きさに関わらず、ブラウザ全体の横幅、フォルドの中央付近に目線が行くと言われています。大型のディスプレイの左右どちらかにブラウザのウィンドウサイズを限定して配置している場合にはこの傾向は顕著となります。絵画などでも同じですが、領域が決まっている対象を見るときは、全体を見渡そうという意識から、自然と視線は対象の中央に集まります。これが印刷物の左上から下へという目線の動きとの違いです。
ですので、視線が集まる中央に注視しやすいカラムがない場合には、ユーザーはサイトIDやグローバルナビゲーションに頼るか、リピーターは必要がありそうなコンテンツ以外を読み飛ばしてしまうケースが見受けられます。全体を見渡せる内容やプッシュしたい内容をブラウザの中央に配置する、コンテンツの先頭をブラウザの中央付近に持ってくることが必要となるでしょう。

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